連載「メジャーのものさし」 第3号
ダルビッシュ有を、球種の数で数えてみた
きょう8月16日、ダルビッシュ有選手が40歳の誕生日を迎えます。
この連載はいつも打率やwRC+の話をしていますが、きょうは別の物差しを持ってきました。球種の数です。ダルビッシュといえば変化球——では、その道具箱は14年でどう変わってきたのか。MLBの投球データで、1年ずつ数えてみました。
年輪
- 2012年(メジャー1年目): 6球種
- 2013年: 7球種
- 2014年: 8球種
- 2015年: 登板記録のない1年
- 2016年: 9球種
- 2018年: 10球種——道具箱の頂
- 2025年: 9球種
毎年少しずつ増えていく。ここまでなら「研究熱心な投手」の話です。この年輪が特別なのは、真ん中に空白があることです。
空白の翌年に、増えている
2015年、登板記録がありません。1年間、マウンドの記録が途切れる。
普通なら、復帰の年は「元に戻す」ことが目標になるはずです。ところがダルビッシュの2016年は、球種が8から9に増え、4シームの平均球速は92.3マイルから94.4マイルに上がっていました。空白の前より、道具が多く、球が速い。
その後も33歳のシーズンに平均95.9マイルとキャリア最速帯を記録しています。年齢と球速の常識を、この右腕は素通りしてきました。
10段の中身
頂点だった2018〜19年の道具箱を開けると、こう並んでいます。
4シーム、シンカー、カッター、スライダー、スイーパー、カーブ、スローカーブ、ナックルカーブ、チェンジアップ、スプリット。
真っすぐ系が3種、曲がる球が4種、落ちる球が2種、緩急が1種。カーブだけで3種類持っている投手は、メジャーでもほとんどいません。同じ「曲がる」でも、速さと角度で別の道具にする——職人の工具箱です。
10年早かったスイーパー
もうひとつ、数字の中に面白いものが埋まっていました。
2013年、ダルビッシュがいちばん多く投げていた球はスイーパー——全投球の37.2%です。スイーパーという言葉がMLBで流行語になるのは2022年ごろ。世界がその球種名を覚える10年前から、ダルビッシュの主戦武器はスイーパーでした(現在の分類基準で過去の投球を遡って集計した公式データです)。
2,075個の三振
そして通算の帳簿。奪三振2,075は日本人メジャー最多です。野茂英雄さんの1,918を、約200回少ない投球回で超えました。
今季はまだ登板記録がありません。道具箱は9段のまま、40歳の誕生日を迎えます。
この連載が数字を数える理由は、こういう年輪に出会えるからです。打率も球速も1年で消えますが、道具箱に増えた引き出しは、記録の中に残り続ける。
おめでとうございます。あすも、別の物差しを1本持ってきます。数字はすべてMLBの公開データから実測する。検定を通らない数字は書かない。それがこの連載「メジャーのものさし」の約束です。
本記事は個人が作成した非公式のものであり、MLBおよびMLB Advanced Mediaとは提携・関係ありません。
数値は2026-08-16時点。球種分類はStatcastの現行基準による遡及集計。Data: MLB Stats API